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静岡地方裁判所沼津支部 昭和58年(ワ)138号 判決 1988年4月20日

原告

伊藤身

右訴訟代理人弁護士

内田文喬

被告

沼津交通株式会社

右代表者代表取締役

加藤覚郎

右訴訟代理人弁護士

望月保身

被告補助参加人

東京海上火災保険株式会社

右代表者代表取締役

松多昭三

右訴訟代理人弁護士

高崎尚志

君山利男

主文

一  被告は原告に対し、金六一五万六九一九円及びこれに対する昭和五八年四月二八日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。

二  原告のその余の請求を棄却する。

三  訴訟費用は、参加によつて生じた費用を含め、これを一〇分し、その八を原告の、その一を被告の、その余を補助参加人の負担とする。

四  この判決は、第一項に限り、仮に執行することができる。

事実

第一、当事者の求めた裁判

一  請求の趣旨

1  被告は原告に対し、金九〇四六万九〇〇〇円及びこれに対する訴状送達の日の翌日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。

2  訴訟費用は被告の負担とする。

3  仮執行宣言

二  請求の趣旨に対する答弁(被告及び補助参加人)

1  原告の請求を棄却する。

2  訴訟費用は原告の負担とする。

第二、当事者の主張

一  請求原因

1  交通事故の発生(以下、「本件事故」という。)

(一) 日時 昭和五四年一〇月九日午前零時三〇分ころ

(二) 場所 静岡県三島市梅名四〇二番地の一地先交差点(以下、「本件交差点」という。)

(三) 態様 原告は、被告会社の雇用する訴外石川米男(以下、「訴外石川」という。)の運転にかかる被告所有のタクシー(普通乗用自動車、静岡55え―九一一一号。以下、「本件タクシー」という。)に客として乗車して帰宅中、本件タクシーが本件交差点に差しかかり直進しようとして交差点内に進入したところ、折から本件交差点に左方から進入してきた訴外山下輝次の運転する大型貨物自動車(静岡11き―五四二八号)の前部に本件タクシーの助手席扉付近が衝突し、本件タクシーの助手席に乗車していた原告が負傷した。

2  責任原因

訴外石川は、本件タクシーを運転して事故現場たる本件交差点に差しかかり、これを直進しようとしたのであるが、この時すでに対面する交通信号機が赤信号を表示していたのであるから、訴外石川としては直ちに停止すべき業務上の注意義務があるのにこれを怠り、右信号を無視して直進進行した過失により、折から本件交差点の信号機の表示に従つて交差点内に進入してきた前記大型貨物自動車に本件タクシーを衝突させて本件事故を惹起したもので、被告は訴外石川の使用者として、かつ本件タクシーの運行供用者として、原告に生じた損害を賠償すべき義務がある。

3  損害

(一) 原告の傷害

(1) 原告は、本件事故により、頸椎損傷・捻挫、左肩打撲、脳震盪症及び急性球後視神経炎、三叉神経痛、ムチウチ症の傷害を受けた。右傷害のうち、頸椎損傷・捻挫、左肩打撲、脳震盪症については一応の治癒をみたが、ムチウチ症に起因する急性球後視神経炎、三叉神経痛が容易に治癒しない結果、両眼の視力低下と視野狭窄の症状の回復をみるにいたらず、昭和五六年六月三〇日、右眼視力0.01、左眼視力0.02、視野は中心五ないし一〇度の中心性狭窄の状態となつて症状固定と認定され、これが後遺症として残つた。

この後遺障害は、自賠法施行令二条の後遺障害別等級表(以下、「自賠法等級表」という。)の第二級の二に該当する(原告は身体障害者福祉法では、同法別表の第一級の身体障害者としての認定を受けている。)。

(2) なお、右の症状固定診断時以降、視力については多少の改善が認められ、現在、他覚的視力測定では両眼0.45、右眼0.40、左眼0.24で、自覚的視力は右眼0.40、左眼0.16であるが、視野障害は依然として改善されておらず、現在、右眼は一五ないし二五度の中心狭窄、左眼は五度の中心狭窄である。

右状態を症状固定として自賠法等級表に照らすと、第九級の三及び十に該当する。

(二) 示談

前記傷害に係る損害のうち、後遺症障害に関する損害以外の損害については、昭和五六年一〇月三日、原被告間に示談が成立している。

(三) 後遺症による逸失利益

(1) 原告は、本件交通事故による受傷前は、視力が右眼1.0、左眼2.0で、視野も正常であり、本件交通事故当時二三歳(昭和三一年一一月二九日生)の健康体で、六七歳まで稼働可能であつた。

原告は、事故前、就労によつて月額二五万円の所得を得ていたもので、これが前記の示談における休業補償費の算定基礎とされている。

ところで、3(一)(1)記載の後遺症障害による労働能力の喪失率は、自賠法等級表の第二級として一〇〇パーセントであるから、その逸失利益を新ホフマン式計算法によつて中間利息を控除して、本件事故当時の現価に引直すと金六八七六万九〇〇〇円となる。

(25万円×12月)×1.00×22.923=6876万9000円

(2) 仮に、現在の症状を前提としても、原告の労働能力喪失率は自賠法等級表の第九級として三五パーセントである。

原告は、本件事故当時は神崎水産を離職して米国ハワイ州に渡航するため臨時に実兄が経営するスナックの手伝いをしていて、確定的かつ固定的な収入というものはなかつたが、渡航のうえは輸入雑貨商を営む計画で、これによつて給与所得者の平均賃金以上の収入を得られる見込みが十分にあつたから、その後のベースアップをも考慮すると、原告の逸失利益を算定する基礎となる収入額としては、昭和六〇年度賃金センサスの産業計、企業規模計、男子労働者学歴計、年齢計の平均年間給与額四二二万八一〇〇円を採用するのが相当である。

そうすると、右労働能力喪失率と新ホフマン式計算方法を適用して、逸失利益の本件事故当時の現価を算出すると金三三九二万二二五七円となる。

422万8100円×0.35×22.923=3392万2257円

(3) 仮に右(2)の収入額が認められないとしても、右(2)に述べた事情からすれば、原告は事故当時は離職していたものの、将来の収入額が症状固定の昭和五六年当時の給与所得者の平均賃金を下回ることはあり得ない。そして、昭和五六年当時の平均賃金は、原告が離職した神崎水産の年間賃金を上回るものであつたから、これを採用するのが相当で、そうすると、昭和五六年度賃金センサスの産業計、企業規模計、男子労働者学歴計、年齢計の平均年間給与額三六三万三四〇〇円を基礎として、逸失利益の本件事故当時の現価を算出すると金二九一五万九四九円となる。

363万3400×0.35×22.923=2915万949円

(四) 後遺症慰謝料

(1) 原告の昭和五六年六月三〇日の症状固定時の後遺障害は、労働能力の喪失率一〇〇パーセントという悲惨なものであり、前途有為な青年が、将来の就労の途を閉ざされ、本件事故がもとで妻恵子とも離婚し、妻子と別離の止むなきに至つたもので、これらの事情を勘案すると、原告の後遺症による肉体的、精神的苦痛を慰謝するには、金一五〇〇万円が相当である。

(2) 仮に、現在の労働能力喪失率を基準としても、前記の喪失率三五パーセントは形式的なもので実質的には更に重度なものであり、米国に渡航して自営業を営む程の気概のあつた前途有為な青年の前途を閉ざすには十分なものであつた。原告は、事故後常に視力等の障害の不安に悩まされ続け、自分の家庭を失い、未だに独立した形態での就業ができない状態にあり、この後遺症を背負つては就業の途は著しく限定され、容易ではない。

そのうえ、かかる重大事態に拘らず、先に入院慰謝料としては金一二五万円で甘んじて示談に至つている事情も考慮すると、原告の後遺症による肉体的精神的苦痛を慰謝するには、金一五〇〇万円が相当である。

(五) 弁護士費用

原告は、原告訴訟代理人に本件損害賠償請求手続を依頼し、その弁護士費用として前記損害合計額の約八パーセントに相当する金六七〇万円を支払う旨約した。

4  結論

よつて、原告は被告に対し、本件事故による損害賠償金九〇四六万九〇〇〇円及びこれに対する訴状送達の日の翌日から支払済みまで民法所定年五分の割合による遅延損害金の支払いを求める。

二  請求原因に対する認否(被告)

1  請求原因1、2の事実は認める。

2  同3について。(一)の(1)の事実は不知。(二)の事実は認める。(三)の(1)のうち、原告の年齢は認め、その余の事実は不知。(四)の(1)の事実は不知。(五)の事実は不知。

三  請求原因に対する認否(補助参加人)

1  請求原因1の事実は認める。

2  同2の事実は認めるが、「原告に生じた損害を賠償すべき義務がある」点は争う。

3  同3について。(一)の(1)の事実は不知。(一)の(2)の事実は争う。(二)の事実は不知。(三)の(1)のうち、原告の年齢は認め、その余の事実は不知。(三)の(2)、(3)の事実は不知ないし争う。(四)の(1)の事実は不知。(四)の(2)の事実は争う。(五)の事実は不知。

四  補助参加人の反論

1  原告の主張する視力障害、視野障害は症状として存在しない。

2  仮に、原告に視力障害、視野障害が症状として存在するとしても、それは「ヒステリー」ないし「心因性」のものであり、本件事故が原因となつたものでなく、本件事故によつて通常生じるものとはいえず、本件事故との間に相当因果関係はない。

3  仮に、原告に視力障害、視野障害が症状として存在するとしても、治療法はあり、改善ができないことはない。

第三、証拠<省略>

理由

一本件事故の発生、責任原因について

請求原因1の事実は当事者間に争いがなく、同2のうち、「原告に生じた損害を賠償すべき義務がある」点は補助参加人が争つているが、その余の事実は当事者間に争いがない。

二原告の症状について

1  <証拠>を総合すると、原告の本件事故後の治療の経過、症状として、以下の事実を認めることができ、右認定を左右するに足りる証拠はない。

(一)  原告は、本件事故前は視力が右眼1.0、左眼2.0で、視野も正常な健康な状態にあつた。

(二)  原告は、昭和五四年一〇月九日本件事故により受傷し、同日から小野外科胃腸科医院に入院し、頸椎損傷・捻挫、左肩打撲、脳震盪症の診断で治療を受けていたが、事故後二週間位してから視野に変調を来し、目がかすむ等の症状を訴えたため、同年一一月三〇日から日本通運健康保健組合東京病院(以下、「日通病院」という。)に入院し、中西堯朗医師(以下、「中西医師」という。)の眼科治療を受け、同年一二月二九日に退院し、以後昭和五六年六月三〇日まで日通病院に通院したが、その間、中西医師の紹介で北里大学病院神経眼科の石川哲教授(以下、「石川教授」という。)、山本俊一医師の診断を受けた。

(三)  原告の、昭和五四年一一月三〇日の日通病院における初診時の症状は、視力は右眼0.04、左眼0.02で視野は両眼中心一五度に狭窄しており、CFF値は右眼二三、左眼二五と低下(正常値は四〇以上)していたが、前眼部、中間透光体には共に異常はなく、眼底所見も正常であつたため、中西医師は網膜レベルより中枢側の視路に何らかの病変があると考え、急性球後視神経炎と診断した。

(四)  原告の右症状はその後やや改善し、昭和五四年一二月二九日の日通病院退院時には、視力が0.08、視野が四〇度、CFF値が四二と判定されたものの、昭和五五年二月一四日の診断時には視力が両眼0.02、視野が中心一五ないし二〇度と判定され、同年三月一七日の診断時には視力が右眼0.02、左眼0.01、視野が中心一〇度と判定され、症状が再び悪化したことや、原告の日常の動作が必ずしも右症状と一致しなかつたことから、中西医師は心因性の視力に対するプレッシャーがあると考えるようになつた。

(五)  原告の、昭和五五年三月三一日の北里大学病院における初診時の症状は、視力が右眼0.01、左眼0.01と判定されたものの、前眼部、中間透光体、眼底、眼圧、CTスキャン検査共に異常がなく、他覚的な異常所見はなかつた。

同病院で同月九日に実施されたフラッシュVECP検査で軽度の異常が認められたが、同年五月一九日に実施されたパターンVECP検査では正常化しており、同年八月一三日時点での石川教授の診断はABC症候群(外傷が引き金になつて起こるヒステリー)であつた。

(六)  中西医師は、右石川教授の診断も踏まえて、原告の障害を事故による心身症による視力障害、視野障害と診断し、症状が固定してきたことから、昭和五六年六月三〇日症状固定と判定した。

右の症状固定時の原告の視力は右眼0.02、左眼0.01で、視野は五ないし一〇度の中心狭窄で、労働者災害補償保険法障害等級第一一級の二に該当すると判定された。

(七)  中西医師は、原告の親に対し、神経科の医師を紹介するので受診するよう勧めたが、原告の親がこれを拒否し、原告自身はこれを聞き知つていないため、その後原告は専門家の治療を受けていない。

(八)  鑑定人松崎浩(東京慈恵会医科大学教授。)は、昭和六二年四月九日付の鑑定書において、原告の症状について次のとおり鑑定した。

原告の鑑定時の視力は、視運動性眼振抑制法による他覚的視力測定では少なくとも両眼視0.45、右眼0.40、左眼0.24を検出し得、距離法、雲霧法による自覚的視力測定では少なくとも右眼0.40、左眼0.16を検出し得るが、最終的な量定には至らなかつた。

視野については、ゴールドマン視野計等による測定により右眼は一五ないし二五度の中心狭窄、左眼は五度の中心狭窄をそれぞれ示した。

本件事故によつて外傷二ケ月後に両眼に視神経障害を発症することはあり得ず、検査結果によれば視路には異常は認められないこと等から、原告の視覚障害の原因として考えられることは、本人をとりまくすべての環境が精神的誘因となり、またそれを助長してきた結果固定したものと考えられ、視力障害の原因は直接外傷にはないが、視野障害は心因性視覚障害の典型的な一徴候といえる。

したがつて、原告の症状は労働者災害補償保険法障害等級の第九級の七の二(自賠法等級表の第九級の一〇)に該当すると考えるが、治療法はあり得ると考える。

2  補助参加人は、原告の主張する視力障害、視野障害は症状として存在しない旨主張しているが、昭和五六年六月三〇日の症状固定時並びに鑑定時において、前認定の症状が存在したことは明らかであつて、前掲各証拠によればこれがいわゆる詐病ではないことも明白である。

三被告が賠償すべき範囲について

以上の原告の症状は、本件事故による受傷を契機として発現したものであり、事故による入院も含めた原告の環境の変化が精神的誘因となつていると解されるから、心因性の視覚障害であるからといつて直ちに本件事故との因果関係を否定するのは相当でない。

しかしながら他方、証人中西堯朗の証言及び鑑定の結果によれば、原告をとりまくすべての環境が視覚障害の精神的誘因となつていること、心因性の視覚障害は機能的な一時的抑圧であり、通常は二、三年で自然に回復するものであること、原告の場合は本件訴訟が新たなプレッシャーとなつている可能性もあることが認められ、原告が昭和五六年六月三〇日に症状固定と診断されて以降、原告自身は聞き知つていなかつたとはいえ、原告の親は中西医師から神経科の治療を勧められたにも拘らず、その後全く専門医の治療を受けて来なかつたため、積極的な治療を受けて来た場合に比して回復が遅れたと推認されることや、更に、口頭弁論終結後に症状が著しく改善する可能性もあり得ないではないこと等の事情も考慮すると、原告に生じた或は今後生じ得る損害を全部被告に負担させることは公平の理念に照らし相当ではなく、過失相殺の規定の類推等の法理により、後遺症による逸失利益については本件口頭弁論終結時までに発生した損害のうち、その六割の限度に減額し、後遺症による慰謝料の算定にもこの事情を斟酌したうえ、被告に賠償責任を負担させるのが相当である。

四損害について

1  後遺症による逸失利益

<証拠>によれば、原告は昭和三一年一一月二九日生れで、沼津学園高校を卒業後、教材販売員、ガス充填作業員の仕事をした後昭和五二年から沼津市近在の神崎水産なる会社に雇われてハマチの養殖作業に従事していたが、昭和五四年六月に神崎水産が倒産しかけたので同社を退職し、その後は母親の友人で米国ハワイ州在住の人を頼つてハワイで輸入雑貨商を自営すべく準備にかかり、同年一〇月二五日に渡航する予定で、それまで兄のスナックを手伝つていたこと、本件事故による症状固定後は暫く住居地に居住していたが、昭和五七年一月に母親と共に喫茶店経営の修業のため親戚を頼つて松本市に移り住んだものの、喫茶店の経営はせず、昭和五八年末に住居地に戻つたが、翌五九年ころ、当時交際していた女性との結婚を両親に反対されて家を出、女性と同居していたが、昭和六一年に女性と別れて住居地に戻つたもので、この間視覚障害により満足に就労することができず、現在も無職であること、昭和五六年一〇月三日に原、被告間で、成立した示談における本件事故の当日から昭和五六年五月三一日までの休業損害の算定には一日金八三三三円の収入が基礎とされたことを認めることができる。

これらの事情に鑑みれば、原告の後遺症による逸失利益の算定にあたつては、昭和五六年度賃金センサスの産業計、企業規模計、男子労働者学歴計、年齢計の平均年間給与額金三六三万三四〇〇円を基礎とするのが相当である。

また、前認定のとおり、原告の症状は昭和五六年六月三〇日における症状固定の診断後も変動しているため右症状固定時の労働能力喪失率を基準とすることはできないものの、少なくともこの間鑑定時の労働能力喪失率を上回つていたと解することができるから、原告の後遺症による逸失利益の算定にあたつては、労働能力喪失率は三五パーセントと認めるのが相当である。

更に、前認定のとおり、被告が賠償すべき後遺障害による逸失利益は本件口頭弁論終結時であることが訴訟上明らかな昭和六二年一二月一六日までであるから、本件事故発生の二年後から八年後までの六年分を下回ることはないと認められ、その六割を新ホフマン式計算法によつて中間利息を控除して本件事故当時の現価に引直すと金三六〇万六九一九円となる。

363万3400円×0.35×(6.5886―1.8614)×0.6=360万6919円

2  後遺症による慰謝料

前記甲第二三号証並びに原告本人尋問の結果によれば、原告は本件事故後の昭和五五年一月三一日妻と離婚し、現在は両親と同居して生活費の援助を得ていることが認められ、これに前認定の後遺障害の原因、原告の症状、治療の経過、原告の生活状況等を総合して勘案すると、後遺症の慰謝料は金二〇〇万円を相当と認める。

3  弁護士費用

原告が本訴の提起と追行を弁護士である原告訴訟代理人に委任したことは当裁判所に顕著であるところ、本件事案の難易、前記の認容額、本件訴訟の審理経過等諸般の事情を考慮すると、本件事故と相当因果関係のある弁護士費用は金五五万円を相当と認める。

五結論

よつて、原告の被告に対する本訴請求は、損害賠償金六一五万六九一九円及びこれに対する訴状送達の日の翌日であることが記録上明らかな昭和五八年四月二八日から支払済みまで民法所定年五分の割合による遅延損害金の支払を求める限度で理由があるからこれを認容し、その余は理由がないからこれを棄却し、訴訟費用の負担につき民事訴訟法八九条、九二条、九四条を、仮執行の宣言につき同法一九六条をそれぞれ適用して、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官秋元隆男 裁判官仲戸川隆人 裁判官生島恭子は転補のため署名押印することができない。裁判長裁判官秋元隆男)

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